就職1年目の憤怒
福岡の大学を卒業し、東京のIT系企業に就職した頃の話をします。
就職活動の際に、いくつか約束してもらっていた話がありました。
たとえば、最初は東京本社で働くけど、数年経ったら福岡の支社に戻れる、とか。
それらの約束事は、入社して半年もした頃には「すべてウソ」と分かった。
人事担当者が適当な口約束で学生を釣っていただけの話だと判明したのです。
配属されたプロジェクトは会社寮から遠く離れた栃木県が勤務先でした。
月曜、朝早く起きて会社寮から新幹線で勤務先へ。
月から木までは日付が変わるまで働き、ホテルに宿泊。
金曜の遅くに新幹線で寮に帰る日々。
上司はパワハラ気質。同期入社の男性社員は上司に何度も殴られてました。
私のほうこそミス多かったのに、私は1回も殴られなかった。
たぶん183センチという体格、そしてストレス溜まりすぎて機嫌悪く、目つきも悪かったからでしょう。
遠距離恋愛だった恋人(=今の妻です)が秋頃に東京へ遊びに来てくれた際は、あまりにも痩せてしまった私の姿を見て驚き、泣いてしまったくらい。
このままでは身も心も崩壊する。
そんなとき、福岡の某IT系企業が中途入社の社員を募集しているという情報を入手。
社会人1年目の年末でした。
3200文字に込めた熱意
応募の際、履歴書や職務経歴書という通常の書類とは別に手紙を書いたのです。
400字詰め原稿用紙、8枚にビッシリ。約3200文字。
なぜ手紙を書いたのか。
私には自慢できるほどの実績が何ひとつなかったからです。
社会人1年目のヒヨッコ。
新入社員教育を終えた後、携わった仕事は、上司や先輩が作成した設計書に沿って10本ほどプログラムを組んだだけ。
そのプログラムがどんな機械の、どの部分に組み込まれ、もっと言えば社会における何に貢献するのか、なーんにも分かってなかった。
言われたことを、ただこなしていただけの社会人1年目。
まず、取引先がどういう業務形態だったのかも知らなかったので、業界の書籍を購入し、何度も読み、ある程度理解しました。
そして、おそらく自分が携わっていたプロジェクトは、こういう仕組みを作っていたんだろうと想像ができたので、実績として業務概要を書きました。
しかし、伝えたいのはそこじゃない。
おそらく相手側も業務の話なんてどうでも良かったはず。
社会人1年目のヒヨッコなんだから、貢献なんて出来ていないのはバレバレなわけです。
だから、自分の「熱意」をひたすら伝えるしか方法がなかった。
自分は実績に乏しく、誇れるものはない。
しかし、こんな長所がある。こんなことが出来る。こういうことを出来る自信もある。
今後必死に勉強して、御社にとって貴重な戦力になる。
自分の将来性を買ってください。
そんなようなことをツラツラと3200文字。
人生最大の緊張
年明けに中途採用面接がありました。
面接前にいろんなことを考えてしまったんです。
今回の中途採用がダメなら、どうすればいいんだろう。
東京にいる限り、彼女との結婚は無理だな。
東京の会社を辞めて無職になるのかな。
無駄に自分を追い込んでしまい、ものすごいプレッシャーに襲われてしまいました。
私、普段は基本的にあんまり緊張しない性格なのです。
人前で話すときもそんなに緊張しない。
300人の前で1時間しゃべったこともあります。
緊張しなかったし、何ならギャグも放ってました。ぜんぜん笑ってもらえなかったんですけど。
そんな私ですが、中途採用面接で名前を呼ばれて部屋に入り、面接官の男性4名を前にしてイスに座り、
「それではお名前と年齢を」
と言われたとき、猛烈に緊張して、言葉がまったく出ませんでした。
呼吸ができない感じになり、名前を発せなかった。
あそこまで緊張したのは後にも先にもあの時だけです。
ただ、なんとか声を振りしぼって名前と年齢を告げたらホッとしたのか、緊張がキレイにスカッと消えました。
あとは普通に面接官の質問に答えていました。
さすがに人生を決める面接ですからギャグは放ちませんでしたけどね。
リーダーが教えてくれた採用の顛末
その中途採用試験に、私は合格できました。
合格して採用されたのは、私を含めて4名。
私以外の3名は、入社して1年以内に部長や課長などの管理職になりました。
スゴい実績だらけのベテランさんばかり採用されたんです。
会社は「即戦力」が欲しかった。そんなことは当然ながら分かっていました。
だから、なぜ社会人1年目のヒヨッコで実績も何もない若造が合格できたのか、分からない。
採用されたのは確かに嬉しかった。しかし他3名の採用者が実績バッチリのベテランばかりだから、なぜその中に自分が入れたのか、余計に分からない。
転職して数ヶ月後、最初のプロジェクトに配属されました。
そのプロジェクトのリーダーは、中途採用面接のときに4人いた面接官のひとりだったのです。
私の歓迎会で、リーダー本人から聞きました。
やっぱり緊張していたのかな。面接の場にその人がいたことなど、まったく覚えていなかった。
「お前が入社できたのはミラクルだって言われてるんだぞ」
リーダーにそう言われました。
「分かってますよ。自分でも不思議なんです」と答えました。
リーダーは笑いながら、面接時の顛末を教えてくれました。
面接官4名が応募した者それぞれの評価をつけ、誰を採用するのか議論をしていた終盤に、
「ひとり、若い人が手紙を送ってきたんです」
誰かがそう告げて、面接官たちに私の手紙のコピーが配られ、しばらく全員が黙々と私の手紙を読んだ。
全員が読み終え、まず社長が開口一番
「この人、採用しましょっか」
そう言ったんだそうです。
残り2人も採用に賛成。
ただ一人、人事部長だけが反対。「即戦力を取りましょう、他の人がいい」って。
そりゃそうです。実績ゼロなんだもん。
後に私の上司となるリーダーが発言。
「彼の将来性、面白そうじゃないですか?」って。
続けて社長が「面白いよね」と。
「これだけ熱意を持って手紙を書いてくる人、見たことない」
そうも言ってくれたそうです。
人事部長も最終的には納得し、私の合格が決定。
「お前、俺のフォローがなければ合格してなかったぞ」
リーダーはドヤ顔で言いました。
ちなみに、唯一反対した人事部長は、入社した私にめちゃくちゃ優しくしてくれました。イイ人でした。
文章は人生を変えられる
今回私が話した件って、ブログやメルマガにも当てはまると思うのです。
実績ゼロでも、誇るものがなくても、熱意があれば、誰かが共感してくれる。
自分ではそれほど価値がないかなと思っても、誰かにとっては貴重で大切な情報になり得る。
何が正解かは、やってみないと分かりません。
私も中途採用の応募で手紙を書いたとき、何をどう書けば選考でプラスになるか、全然分からなかった。
それでも一生懸命に書き、転職に成功した。
実績ゼロだった私が、手紙のおかげで転職できた。
この事実は何十年と経過した今でも、自分にとって大きな自信となって心に残り続けています。
あとがき
当時の手紙は、何度も何度も書き直しました。人生がかかってましたからね。
実は今回のメルマガも5~6回、書き直しています。
当時の想いがあふれてしまって、めちゃくちゃ文章が長くなり、まとめられなかったんです。
だいぶ整理はしたけれど、それでも長くなりました。
読んでいただき、ありがとうございました。
